Waterworks
Waterworks Radio

利根川

建設 1888 - 1890
所在地

千葉県、埼玉県、茨城県

技師
Anthonie Rouwenhorst Mulder

日本列島最大の島、本州の南東部を縦断する全長322kmに及ぶ利根川の開発は、最も重要な河川整備事業の一つです。利根川は歴史的に氾濫や水勢の変化に悩まされやすく、安定させるために何世紀にもわたって大規模な改修が行われました。19世紀後半の明治時代には、利根川流域の産業が活性化し、重要な交通路として活躍しました。これにより、より高速な河川通運が必要になってきました。

これに対応して、オランダの土木技師アントニー·ローウェンホルスト·ムルデルは、河川交通を効率化するために運河を設計しました。1890年、利根川沿いの船戸と江戸川沿いの西深井を結ぶ8kmの運河が完成しました。最盛期には、1日あたり最大100隻の船が行き交い、日本の交通インフラに非常に大きな役割を果たしました。しかし、1941年頃には鉄道と陸路運送の台頭により、運河の利用は急激に減少し、日常交通での運河の存在感は失われていきました。

楽曲:SUGAI KEN

このアルバムは、源流の水上山から太平洋に注いでいくまでに至る利根川の景観の変化を表現するため、明治期に来日したオランダ人技師に縁のある場所で録音した環境音をもとに作曲されています。ヨハニス·デ·レイケによる八幡川砂防堰堤(群馬県北部)、アントニー·ローウェンホルスト·ムルデルによる利根川流域(流山市)、アイザック·リンドによる飯沼水準座標石(銚子市)の3箇所です。収録には通常のマイク、バイノーラルマイク、水中マイクが使用されています。

Civil engineering has shaped urban form and planning in Japan for centuries.
For long, the country has been threatened by natural hazards such as flooding,
typhoons, earthquakes and tsunamis — with engineering traditionally
providing the necessary defences.

During the Meiji era, the Japanese government invited Dutch hydraulic engineers
('watermannen') to help improve water infrastructure. Their innovative solutions
exemplified international collaboration during Japan's critical modernisation
period and underscores the enduring bond between both nations.

Initiated by Field Records, Waterworks covers over 50 Dutch waterworks developed
across Japan during the Meiji era. Navigate around the map and click on sites' names
to learn about their development — often accompanied by visual or sonic impressions.

長い間、台風、地震、津波などの自然災害に脅かされてきた日本。土木工学は従来より災害防御の
手段として、何世紀にもわたり日本の都市形態と都市計画を形成してきました。明治時代、日本政
府はオランダの水利技術者(「ウォーターマンネン」)を招き、国内の上水道インフラの改善に協力
してもらいました。オランダ人技師達が伝えた革新的な技術は、日本の近代化の重要な時期に大き
く貢献した国際協力の好例であり、両国の永続的な絆につながっています。

革新的な影響を与えたにもかかわらず、オランダ人技師による日本の治水管理への貢献は、今まで
大きく注目されていませんでした。本展示「Waterworks」は、明治時代に日本各地で開発された50
か所以上のオランダ上水道跡を展示した、フィールドレコーズ始動の日蘭共同プロジェクトです。
地図上の史跡名をクリックして、その場所の写真や音響とともに、歴史や開発当時の様子を学んで
みてみてください。